
誇りたかくも慎ましく生きた日本人の群像がここにあります。
本書は、山口に残る瑠璃光寺五重塔を建てた中世室町時代の番匠たちを左右近(さうちか)という若者を軸に描いた壮大な時代小説です。
作者は70歳の時に、「此のふでぬし弐七」と番匠が墨書きした国宝の巻斗を知り、左右近という若者を心の中に思い浮かべました。
その後、調査、研究、取材を重ね、89歳で『見残しの塔』を発表したといいます。
羽黒山五重塔を描いた第二作『禊の塔』は2010年91歳で世に送り出し、現在第三作に取り組んでいるそうです。
九州日向・椎葉村と若狭・小浜の二人の男女が、山口瑠璃光寺で出会うロマンと、番匠たちが苦難の末、五重塔を建立する次第を、淡々と筆を抑えに抑え、みごとに描ききっています。
心に残るのは、登場人物ひとりひとりの誠実さ。誇りたかくも慎ましく生きた日本人の群像がここにあります。
『見残しの塔—周防国五重塔縁起』久木綾子著 文春文庫刊 ¥733(+税)
『禊(みそぎ)の塔』久木綾子著 新宿書房刊
『火天の城』山本兼一著(文春文庫刊)も城の建立を描いて面白いです。









