
急な話で物事がいろいろと動いて、気付いたらクリスマスには香港にきていた。
ずいぶん前にきた昔の記憶が薄れたのか、街がかわったのか、行ったことがあると思い出せる場所が随分とすくない。
香港ではクリスマスにライトアップされた夜景をみに人々がたくさん街に繰り出していた。
もちろん日本でも街が賑やかにはなるけど、香港の場合いく場所がかぎられているからか本当にすごい人で、交通規制もされて日本のお祭りかお正月のような賑わいになっていた。
サンタの帽子をかぶったり、光るヘアバンドをつけてたり、思い思いに楽しんでいて、なんだか楽しい。
そんななか私は、「打小人(ダーシウヤン)」という儀式に街中で出会った。
日本の藁人形のようなもので、嫌いな人を呪ってくれたり、自分に憑いた呪いを祓ってくれたりするのだそうだ。
なんとなく恐いような気がするのだけど、街中で堂々とオープンに行われている。

儀式をしてくれるのは年老いた女性で、嫌いな(呪いをかけたい)人の名前を書いた紙を女性用の靴のヒールでたたいてボロボロにして、火にかけてまじないを唱える。
最近はあまり見かけなくなったと友人が言っていたのでめずらしいのか、見物人ができたりするなか、だれかに呪いをかけたりするわけだ。
なんだか不思議だし奇妙だし面白そうだけど、日本では「人を呪わば穴ふたつ」っていうし、そもそも呪いをかけたい相手なんていないしなあ、と悩んでいると、観光客らしき外国人がやってもらっている。 だれかの名前をかいたの?と訊くと、「もちろん。」と言って某前大統領の名前を書いたのらしい。
おばちゃんがやけに丁寧に叩いているのを指差して「彼女も彼のことが嫌いらしい。」と冗談をいっていた。
なるほどね、そんな手があったのね、と思いながらも、有名人はこんなところでいろんな人に呪われたら大変だな、とおもう。
そんなわけで、私は呪いたい相手はいないのだけど、厄払い的に憑き物をおとしてください、とだけお願いして軽い気持ちでやってもらうことにした。
前回の内容でもかいたように、なんだか不思議な出来事もつづいたことだし、悪い流れは祓い落としてもらって新しい年を迎えるのもよいかな、ということで。
優しそうなおばちゃんをえらんで、私の希望を友人につたえてもらうと、なんだかとても丁寧におまじないを唱えてくれた。
広東語で私には意味の分からないそのおまじないのリズムを聞きながら炎を眺めていると、今年あったいろいろな出来事がすこし走馬灯のように頭をよぎる。
今年は多くの人にとって大変な年であったろうとおもう。
多くの人に起こった災いは洗い流されて、新しい気持ちで皆が新年を迎えられますように。


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